新型コロナウィルスの感染拡大により、外国人向けの日本語授業もオンライン授業に切り替えられています。
しかし、通常の対面授業をそのままオンラインでやるわけにはいかない!ということで、今日は「今すぐできる!オンライン授業」をテーマに、日本語教師の皆さまに役立つツールやテクニックを紹介します。
日本語オンライン授業「無料ビデオ会議システムとアプリ」
ビデオ会議システムは「ZOOM」「Google Meet」「Skype」などいろいろありますが、基本的な使い方はどれも同じです。
ただし、ここで紹介するオンライン用の教室活動などはGoogleの無料アプリ(Google Apps)を利用したものが中心になるので、もし、グーグルのアカウントをお持ちでない方はぜひ作成してください。超~便利なので。
学生についてですが、若年層であれば恐らくGmailユーザーであると思います。
大学生の場合も、大学用で与えられる個人メールがGmailであることが多いです。もし、利用者でない場合…..これを機に無料ですのでGoogleアカウントを作ってもらいましょう。
オンライン授業のお約束
初回クラスでは、新しく始まるオンラインレッスンのルールを確認しましょう。
以下に「やさしい日本語」で「オンライン授業のお約束」リストを作りました。これを使いながらオリエンテーションで説明してください。
当然ですが、本とノート、文具の用意。もし、教科書の付属教材(聴解練習や会話ビデオ)を使うなら、こちらも各自のPCですぐ使えるようにセッティングしておいてもらいましょう。
教室の授業では、マイカップ☕でコーヒーをいただきながら授業を受けることなどできませんが、オンラインではOK👌。学生にはオンライン授業にも利点があることをアピールしておきましょう。
複数の学生がいるオンライン授業で大切なことは、先生や他のクラスメートが話しているときはマイクをOFFにするということです。何も話していないのにオンにしたままでいると、犬の鳴き声、物売りの声(日本は無いね)、掃除機の音、工事の音...
イヤホンをしているクラスメートの耳を直接攻撃するのでとても危険です。(鼓膜破れるって)
オンラインレッスンの良いところの一つ、それは対面授業と同様、分からないときは先生にすぐ質問ができるところ。「ZOOM」であれば「手を上げる」ボタンなるものがご丁寧に用意されており、これを使えばなんと指1本で質問ができます。手を高く上げる必要もなく、アラフォーの四十肩でも問題なし。
その他のシステムの場合は、マイクをオンにして話すか、チャットで質問をするように指導しましょう。
そして、最後の注意点。
オンラインレッスンではクラスメートに顔が見えるよう、明るい場所で、そして、話すときはパソコンやスマホのカメラに目線を向けて話そう、ということです。これは私たち教師にも言えることですね。
出席をとる方法
出席のとり方はいろいろあると思いますが、20人以下のクラスであれば私がおすすめする方法は、出席簿(エクセル)を画面共有し、一人ずつ点呼していく方法です。
まずここで全ての学生の声を聞くことができるし、学生も気持ちのスイッチを切り替え、授業を受ける体制に入ることができます。
学生全員の顔を一斉に見たい!
「Google Meet」の場合、参加者の顔を同時に見られる数が限られています。7~8人でしょうか。「ZOOM」の場合は最大25名のが同時に表示されるのですが...何でなのよ、グーグル?
でも、そこで便利なのが、Chromeの拡張機能「Google Meet Grid View(Fix)」です。
無料で簡単にインストールでき、これを使えば人数が多いクラスでも同時に学習者全員の顔を見ることができます。
インストール後にMeetを開くと画面右上に四角のアイコンが追加されているので、そこで画面表示の切り替えができるようになります。これもそのうちMeet自体に備わる機能になると思いますが。
**追加情報です。ZOOMに備わる「手を上げる」質問ボタンですが、以下の拡張機能「Nod」を使うと、デフォルトのMeetにも追加できます。絵文字もあるので、教師の「わかりますか?」の問いかけにマイクがミュートでも👍で瞬時に答えてもらえます。学生の反応を確認するのがお手軽になりました。
画面の共有って?
「画面の共有」というのは、どのビデオ会議システムにも備わっている機能で、2種類の共有する方法があります。1つは「あなたのパソコンを全画面共有」、もう一つは「特定のウィンドウの共有」です。
「パソコンの全画面を共有」は、パワーポイントといったスライドショーだけでなく、動画も、PDFの資料も混ぜながら見せたいというときに便利です。しかし、あなたのPCを学生にさらけ出すというマイナスの点もあります。
あなたのパソコン...デスクトップはどうですか?整理整頓されていますか?見られてはいけない物はありませんか?(!?)
私の場合、ブラウザ(ChromeやFirefoxなどネットに接続するソフト)を見られるのがちょっと恥ずかしくて。ページ上部に並ぶお気に入りページがね…ショッピング関係のブックマークが多いの。面倒ですが、PC全画面共有のときはこのブックマークバーを隠しています。
スライドショーだけを使うのであれば「ウィンドウの共有」を使いましょう。
なお、「画面共有」している間も、発言をする人の画面は右側に自動で表示されます。小さい画面ですが、学生は先生の顔も見ながらプレゼンテーションを見ることができます。
オンラインでひらがなや漢字はどう教えるの?
普段の教室のクラスでは、黒板やホワイトボードに書き順から丁寧に指導する文字関係。日本語教育には欠かせません。
そこで、グーグル!(またです)
「描画キャンバス」という便利なアプリがございます。
真っ白な画面に書くこともできますが、マウスで書くのはちょっと難しい...そんな場合は、「画像から新規作成」を使ってみましょう。事前に用意した指導したい文字の画像の上に、描画キャンパスの赤色のペンで注意する点のみをその場で書いて見せるというやり方です。これならマウスの少々歪んだ線でも気になりません。使用できる画像は絵、写真、jpg、pngなどです。
ちなみに私は絵を描くのでペンタブレットを持っているのでそれを使っています~。(自慢じゃないよ。)中華製の3000円ぐらいのお安いものです。すごいよね、3000円で買えるなんて。でも全く壊れないし、おススメ。
考える作業、読む作業に時間制限をつけたい “TIMER”
「それでは5分、各自でちょっと考えてくださ~い」とか、「ではこのテキストを4分から5分ぐらいで読みましょうー」とか、制限時間を学生と共有で目で見て確認したいというそんなときに便利な隠れワザです。
まず、アメリカのGoogleにアクセスしなければならないのですが、そのグーグル検索窓に「TIMER」と入力する、ただそれだけです。あらまあ不思議!「タイマー」が現れます。デフォルトでは5分になっていますが、自由に変更が可能で、時間が来ると懐かし目覚まし時計の音でピピピと知らせてくれます。
休み時間にもこれを設定しておくといいですね。
学生はカメラ、マイクはオフにしていますが、先生が画面を共有したままであれば、「ピピピ」が鳴ると再開の合図になります。
オンライン授業の教室活動
同じ授業料を払っているのに、対面授業からオンラインレッスンに変わって損だ!などど学生に言わせないために、我々教師は工夫を凝らさなければなりません。
教室の授業では難しい…でも、オンラインだからこそ出来るものを。ん~...そんなのあるのかい?
はい。ありましたよ~。
「Google図形描画」を使おう!
「Google図形描画」は、図や表が作成できるGoogle Appsの無料サービスです。
この「Google図形描画」のいいところは、
- 同じ場所にいない学生同士でもオンライン上で一緒に共同で作業、編集ができる。
- オンラインでは15分~20分が限度の集中力の中、異なるタイプのアクティビティを盛り込むことで学習を持続できる。
- 授業の準備が簡単で、一度基本テンプレートを作れば、いろいろな練習に応用できる。
使い方は、ワードやパワーポイントよりもずっと簡単!!
試しにいろいろ作ってみたので、参考に見てください。
青字の各アクティビティ名がGoogleドライブの共有リンクになっています。
クリックすると「Google図形描画」に移動するので、各自で「コピーを作成」(左上のファイルボタン)し、ダウンロードしてください。
漢字はどれだ?(数字バージョン)
このイメージでは分かりにくいですが、下部に順不同に並んだ漢字を上の表の適切な場所へ移動させるゲームのようなものです。マウスの左クリックで持ち上げ移動させます。
全員で一斉に早い者勝ちでやってもいいし、一人ずつ順に指名してやってもいいですね。
ダウンロードはこちら。
「漢字はどれだ?」(数字バージョン)
い形容詞&な形容詞のグループ分け
普段の教室の授業ではホワイトボードを使ってやっているものです。オンラインではこの「Google図形描画」を使いましょう。学生は、(insert text here)という箇所に自由に書き込みができます。
ダウンロードはこちら。
い形容詞&な形容詞のグループ分け
「~て、~て」(第15課、正しい動詞の選択と並べ替え)
イラストに合った動詞を選び並べ替える練習です。
作業は上の「漢字はどれだ?」と似ています。
ダウンロードはこちら。
「~て、~て」(第15課、正しい動詞の選択と並べ替え)
「~し、~し」(第28課・練習C、マンガスタイル、吹き出しを変えろ!)
こちらは作成に20分ぐらいかかってしまいました…これではいくら時間があっても足りません。
皆さんは練習Cのイラストシートを貼り付け3分で作成してしまいましょう。吹き出し部分に文字が書き出せるように設定するだけでOK!もちろん、教科書の練習Cの練習が終わってからの応用練習での活動です。時間に余裕がある場合は、登場人物(話し手)のイラストを学生本人の写真などに置き換え、おもしろおかしくオリジナルの会話を作る作業をしてもいいですね。画像を切ったり貼ったりする作業もとても簡単です。
そして、作成後は、学生一人ずつ発表してもらいましょう。画面共有は教師だけでなく、学生も可能です。こうしたミニ発表会も単純な学習の流れを変えるおススメの教室活動です。
ダウンロードはこちら。
「~し、~し」(第28課・練習C、マンガスタイル、吹き出しを変えろ!)
付箋バージョン(ブレインストーミングタイプ(中級へ行こう第1課)
中級レベルではブレインストーミングで使う付箋デジタル版で、意見交換などの活動をやってみましょう。本物の紙の付箋と同じで、付箋への書き込み、貼り付けが自由にできます。
ダウンロードはこちら。
付箋バージョン(ブレインストーミングタイプ(中級へ行こう第1課)
「QUIZIZZ」 大人の学習者だってゲームは大好きなんだよ
「QUIZIZZ」というのは、学校や家庭で利用されている学習ゲームです。

世界の利用者は1,000万以上、利用できるゲームの数は数百万!もちろん、自分でも自由にクイズが作成できるとっても便利なアプリです。他にも似たようなアプリに「Kahoot!」などがありますが、私は「QUIZIZZ」のほうが使いやすいと思いました。うちの息子たち(高校生、中学生)も学校の授業でよくやっているそう。
日本語版がまだ無く英語版での操作ですが、アカウントを作成し、教師用画面に入ると使い方はすぐ分かると思います。(このアカウント作成もGoogleアカウントと連携可能)
学生が一斉に同じゲームに参加する流れですが、
- 学生はPCまたはスマホでQUIZIZZにアクセスする。(サインイン等は不要)
- 教師はゲームを選択し「PLAY LIVE」をクリック。
3つのオプションの中から「Classic」を選択し、紫色の「HOST GAME」ボタンを押す。「game code」が現れるので、学生と共有する。
ビデオ会議のチャットにコピペ―ストが簡単。 - 教師のQUIZIZZ画面には、ゲームコードを入力した学生が参加者リストに順に表示されるので、全員が揃うまで待つ。全員が揃ったらスタートボタンを押す。
- ゲーム終了後は、上位3位に拍手。(もちろんフィードバックも。)
学生は誤答した場合、正しい答えがすぐに確認できます。教師側も、正答率などのデータをその場で確認できる優秀なアプリです。
他にもチーム戦や定期試験としての利用も可能ですが、今回私は学生の集中力が切れるタイミングのちょっとしたブレイクのために活用しようと思っています。
オンライン授業の1時間はツラい!
授業開始時に前回レッスンの復習として、また、終了時のまとめとしての利用も可能ですね。
以下は私が作成したカタカナクイズです。試しに遊んで見てください。
その他のブレイクアイデア
しつこいですが、オンラインの授業ではブレイクが大切。
京都の日本庭園
こんなのはどうでしょう?
2分、3分のブレイク時間を取り、このビデオで癒されましょう。
静寂の中の自然の音で癒されます。京都の日本庭園を見て、日本の伝統文化を知ることもできます。
気を休める音楽は日本語能力試験(JLPT)の聴解テストの中でも流れるしね。
ラジオ体操第一
初級じゃ言ってること分からないかもしれないけど、中級なら多少は聞き取れる?
教室だとスペースがないからあまりできないけど、家だとOK?
座ってできるのもあるからお手軽です。
アラフォーの日課を授業に取り入れるなんてダメでしょうか。
今だけ限定!無料で提供されている日本語教材
この危機を乗り越えようということで、出版社のほうでも努力してくださっています。
みんなの日本語無料公開-Minna no Nihongo available for free
- みんなの日本語初級Ⅰ 第2版 本冊
- みんなの日本語初級Ⅰ 第2版 翻訳・文法解説 各国語
- 『みんなの日本語初級Ⅰ 第2版 会話DVD』Web ver.1課~25課
- 『みんなの日本語初級Ⅰ 第2版 CD5枚セット』 Web ver.1課~25課
- みんなの日本語初級Ⅰ第2版 教え方の動画
公開期間 2020年4月9日(木)~2020年5月31日(日)
プロの日本語教師の教え方の動画(実際の授業の様子)も無料で見られます!個人的には「練習C」の扱いを見てみたかったけど、無かった…

6月末までの期間限定『まるごと』全ページ公開
三修社「まるごと」(入門( A1 )から初中級( A2/B1 )まで)
授業の準備には、紙媒体の物とデジタル版の両方があるほうが楽チン。
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以上、長文になりましたが、ブレイク5回は入れて書きました...
オンライン授業を成功させて、この危機を#みんなで乗り越えよう。
コメント
けい子先生、
近々、クラスルームのことをお書きになるとのこと、楽しみにしています!
ありがとうございました。
こんにちは!カナダで日本語教師をしております。パソコン音痴なので、オンライン授業がもう大変で頭を抱えておりましたが、こちらのサイトに辿り着き、、、うわー、こうすればいいのね?とブツブツいいながら読みました。ありがとうございます!
私もペンタブレットを買ったのですが、どうも使い方がよくわからないのです。漢字の書き方やちょっとした説明をするのにペンがあった方がいいなと思って購入したのですが、これはZoomだとホワイトボードを画面共有したところで使用するやり方でいいのでしょうか?けい子先生はどのように使われていますか?何かホワイトボードアプリのようなものをダウンロードしないといけないのでしょうか?
質問ばかりで申し訳ありませんが、教えていただけると助かります。
Kokoさま
カナダからありがとうございますー。
実は私はGOOGLE MEETを使って授業しているのでZOOMの使い方があまりわからないのですが、
今グーグルで検索したら、ZOOMのホワイトボードでもペンタブレットが使えるとありました。
特にアプリなどをダウンロードする必要もないようです。
かなや漢字の書き順や注意する点はホワイトボードで書いているところを見せながら説明するのが良いですよね。マウスでも書けますが、思うような線は書けません。
学生の書き取りの練習に関しては、ペンタブを持っている学生はPC上で可能かもしれません。でも、マウスでかなの練習をするのは難しいと思います。
私は各自、ノートに書いて練習する時間を与え、書けた人からカメラにノートを近づけてもらい、ちゃんと書けているかチェックしています。書いては見せてもらう、それを繰り返し、指導しています。教室での机間巡視とほぼ同じです。( *´艸`) 書いた文字の確認は一人ずつしかできませんが、チェックしている間、他の学生は繰り返し書く練習をしているので、時間が無駄になるというようなことも特にありません。
お役に立てると良いですが…
けいこ先生、
返信ありがとうございました!
漢字の練習のやり方、とても参考になりました。私もこのやり方で頑張ってみます。オンライン授業になってパソコン音痴の私はとても苦労していますが、けいこ先生のブログにとても助けられています。また、質問で申し訳ないのですが、宿題はどうなさっていますか?私はグーグルクラスルームにPDFファイルをポストして、次の授業のはじめにみんなで答え合わせをするやり方にしているのですが、これだと生徒がどこを間違えたのか、ちゃんと書けているのかわからないので、どうしたものかと悩んでおります。プライベートレッスンをしている生徒さんには宿題のスクリーンショットを撮ってもらってメールしてもらうやり方でやっています。他にいいやり方がありましたら是非シェアしていただけると嬉しいです。
Kokoさま
お役に立てたようでほっとしました。
オンライン授業が始まり、わたしもGoogleのclassroomを使い始めました。
便利ですよね~。これを使えば、前から導入したかった「ポートフォリオ」もできそうです。
宿題のことですが、レベルは?文法練習?作文?
近いうちにclassroomのことを書こうと思っています。
(書きたいこといっぱいあるのに、全然書けてないんですけどね。)
ではまた!