約300時間の初級レベルを終え、とうとう中級に突入しましたね~。
ここでは話す・聞く・読む・書くの4技能を総合して学べる「みんなの日本語・中級」(スリーエ―ネットワーク)の教案(例)、導入イラスト、クラス活動、そして指導ポイントを紹介します。
「みんなの日本語・中級」の基本的な使い方はこちらの投稿に書いたので、初めて使用する先生は参考にしてください。
【話す・聞く】文型の語彙
【話す・聞く】の文型部分の新出語彙は、次の3つです。
- 「どのように」は副詞のように動詞を修飾します。(例「どのように頼みますか」)
- 「~に迷う」の助詞「に」に注意します。
- 「先輩」の対義語「後輩」も導入します。
【話す・聞く】の文法と練習
~てもらえませんか・~ていただけませんか
会社の先輩(山田さん)にノートを借りるときは、「~てもらえませんか」「~ていただけませんか」を使います。
~てもらえないでしょうか・~ていただけないでしょうか
次は会社の部長にお金を借りるというあまり起こってはいけない、望ましくない状況です。「~ていただけないでしょうか」「~てもらえないでしょうか」を使って丁寧に依頼します。
スミスさん~(泣)、大丈夫かー
依頼表現のまとめ1(丁寧さ別)
依頼表現は初級で既に導入されていますが、場面に合った適切な表現を区別して使いこなすことが中級では求められます。
ここで次の2点の注意事項を確認しておきましょう。
- 話し手が場面や状況によってどの表現を使うかを判断する。
- 表現の違いだけでなく、話すトーンによっても聞き手に与える印象は異なる。
依頼表現のまとめ2(丁寧さ別)2番
命令形も含め、初級から学習してきた依頼表現をここでまとめて復習しておきます。
- 貸していただけないでしょうか
- 貸してもらえないでしょうか
- 貸していただけませんか
- 貸してくださいませんか
- 貸してもらえませんか
- 貸してほしいんですが
- 貸してください
- 貸してもらえない?(貸してもらえる?)
- 貸してくれない?(貸してくれる?)
- 貸して
補足の文型項目
教科書では文法の補足項目になっている文型です。各コースのプログラムに応じて導入するかどうかを判断してください。
AじゃなくてBです
この文型は、学生の所有物、教室にある物などで短文を作って練習します。
教室でイラストなしで確認できる例文です。例えば、
- これはボールペンじゃなくて、鉛筆です。
- 彼はスミスさんじゃなくて、シルバさんです。
【話す・聞く】の会話の語彙
- 「それで」 類義語に「ですから」「だから」「そのため」など
- 「市民会館」 学習者の言語によっては教科書の翻訳・文法解説の翻訳では分かりにくい場合があるので、市民会館がどのように利用されているかを具体的に説明するとよいです。
- 「伝統的な」 《~的な》は、明治時代に英語の”-tic”の翻訳を「的」(音が近い)としたことから。名詞に付いてナ形容詞の語幹をつくります。
- 「実際に」 促音の発音が難しいようです。発音練習を繰り返します。
- 「奨学金」 「洗濯機」や「水族館」と同様に、話すときは「く」が弱くなり、促音「っ」に変わります。「しょうがくきん」→「しょうがっきん」
- 「断る」⇔ 対義語「引き受ける」
【話す・聞く】「お願いがあるんですが」
もう1度聞きましょう
スクリプトを見ながら、空白部分(語彙・表現)を埋める練習です。ディクテーションですね。
「先日はありがとうございました」という会話表現は、お礼を述べる典型的な表現です。この表現が使われる背景を説明しておきましょう。
日本人は感謝の気持ちは恩を受けたそのときだけでなく、後日改めて会ったときにも伝えます。これは欧米の国には見られない習慣ですから、きちんと説明をします。
私は海外生活が20年近くになりますが、今でも日本人のメンタリティで「この間はありがとう」(現地の言葉で)と言ってしまいます。気を悪くする人はいないと思いますが、改めて考えると過去のことに対し繰り返し言われる感謝のことばに、彼らは違和感を感じているかも。
チャレンジしましょう
ペアになり、「若い会社員(ロールA)」と「部長(ロールB)」という役でロールプレイをします。
場面は「部下が上司に自分の結婚式のスピーチを依頼する」という設定です。
ロールプレイカードのダウンロードは以下のページからできます。
ここのポイントは、会社という場面での目上の人(上司)との会話ですから、 丁寧な依頼表現「~ていただけないでしょうか」が使えているかどうかがポイントです。
「~ていただけないでしょうか」という学習者にすれば早口言葉のようなこの表現が使えていたら、この課の目標は達成できたのではないでしょうか。
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以上、「みんなの日本語・中級」第1課の【話す・聞く】部分の教案&イラストでした。
続きの【読む・書く】部分の教案はこちらを参考にしてください。
コメント
多用中もうしわけありませんが、少し教えてください。
私は中級を教えた経験がありません。
みんなの日本語初級1本冊には単語一覧表がありますが、みんなの日本語中級1本冊には語彙の一覧表がありません。必ず翻訳・文法解説を購入する必要がありますか?私は英語がわかりませんが、日本語版がありますか?
よろしくお願いします。
よしさま
はい。「みんなの日本語・中級」も本冊、分冊に分かれているので、学習者の母語の翻訳付き分冊を用意する必要があります。
いろいろな言語で出版されていますが、日本語版というのは無いと思います。おそらく英語版を使うことになりますが、各語彙の英語翻訳だけでは不十分なことがすぐ分かると思います。使い方の例や類義語の紹介などをしながら語彙導入をしていくことになります。