日本語を教える① ~「みんなの日本語」とは? 

こんにちは。海外在住アラフォー日本語教師です。

今日は、日本語教育に携わる人なら知らない人はいない有名教科書「みんなの日本語」についてまとめていきます。

後半では、「みんなの日本語」を使い、初めて日本語を教えようという方に役に立つ「みんなの日本語」の簡単な使い方も紹介します。

 

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「みんなの日本語」とは?

「みんなの日本語」とは、外国人が日本語を学ぶための教科書です。

他にも教科書はたくさんあるのですが、なぜ「みんなの日本語」が有名なのか?

 

その主な理由は、

1)教師向けの「教え方の手引き」をはじめ、副教材(会話ビデオ、漢字テキスト、読解、聴解などの練習問題集)が揃っており、

2)日本語能力試験(JLPT)に対応できる文法と語彙が網羅されているからだと思います。

 

他にも理由はありますが、この2点が保障されていることで教師は安心して授業ができるというわけです。

 

「みんなの日本語」ヒストリー

現在使用されている「みんなの日本語」は2012年に出版された改訂版(第2版)になります。

第1版の出版は、今から22年前の1998年。当時の「ワープロ」や「カセットテープ」といった語彙は今ではほとんど使われないため、この改訂版で削除されたのでした。

さて、この「みんなの日本語」。日本語教師の間では略して「みん日」と呼ばれますが、元々は「新基礎」と呼ばれる教科書「新日本語の基礎」(1989年)がベースになっています。

「新基礎」が出版された目的は、発展途上国から日本に来る技術研修者に日本語を教えるためです。その後、一般の学習者に教えることを目的に「みん日」が開発されました。
(「新基礎」の前にはやはり「日本語の基礎」という教科書が存在し、1972年に発行されています。アラフォーの私が生まれる前!わおう。)

 

私が日本語を教え始めたときは、ぎりぎり(?)「新基礎」ではなく「みん日」を使っていたのですが、この「みん日」が出版されるまでは日本語教科書にあまり選択肢がなかったらしく、趣味で日本語を学ぶ高校生にも「新基礎」を使って教えていたそうです。

技術研修生が対象の「新基礎」の登場人物は、インド人の研修生、ラオさん。
そして、テキスト内で使用される語彙は、「ドライバー」や「スパナ」、「部品」といった工場に関係する単語…女子高生も「ドライバー」使う…?!よね。

 

とにかく、アメリカ人、サラリーマンのミラーさんが主人公になった「みんなの日本語」が出版されて、めでたしめでたし。

文型シラバス「みんなの日本語」

日本語教育って何なのよ?ってなったとき、まず目にするのが、
「シラバス」と呼ばれる学習項目(内容)です。

 

一般に「シラバス」と聞くと、大学生が学期の始めに受けたい講義を選ぶために参考にする各科目/講義の概要や授業計画などがまとめられたものをイメージするかと思います。

でも、外国語教育においての「シラバス」というのはちょっと違っていて、簡単にいうと「教える内容を項目別に分けたもの」で、いくつか種類があります。

各シラバスの違いについては別の機会にこのブログでまとめますが、ここでは伝統的なシラバスである「文型シラバス」(構造シラバス)について説明していきます。

 

まず、「みんなの日本語」は、文型シラバスです。

 

文型シラバスは文法シラバスとも呼ばれるのですが…

 

?「文型シラバス」って何なのよ? ですよね…

 

文型シラバスというのは、
「文法・文型を中心にして構成されたシラバス」のことです。そのままですが…

 

「みん日」の場合は、学習する文型(文法)が各課に5つぐらいまで挙げられており、会話練習には学習する文型を使った、いくつかの異なる場面が用意されています。

単純な文型(文法)から導入し、順に複雑な文型へ進めていくので「文型積み上げ式」のテキストでもあります。(言語の構造に注目し構成されているため、構造シラバスとも。)

 

また、文型をベースにした「みん日」は上・下巻(Ⅰ・Ⅱ巻)あり、全課を終えれば日本語能力試験(JLPT)のN4レベル前半Ⅰ巻だけを終えた場合はN4の下のN5相当というように、レベル別の「評価がしやすい」のが特徴です。

 

4技能を学ぶ「みんなの日本語」

外国語教育で4技能というと「聞く、話す、読む、書く」の技能を意味します。

 

上で述べたシラバスの話に戻りますが、文型シラバス以外のシラバスに、特定の技能に注目した「技能シラバス」というものがあります。例えば、書く技能として「レポートの書き方」、話す技能として「スピーチの方法」というように、特定の技術習得を学習項目にしています。

「みんなの日本語」は、技能シラバスではありません。文型シラバスのテキストです。

特定の技能ではなく、多様化している学習者に対応できる、基本の4技能の全てを総合的に学べる教科書になっています。

 

素晴らしい教科書ですね~。

 

こんな良いとこだらけの「みんなの日本語」ですが、注意点もございます…

みんなのための「みんなの日本語」?

よく日本人は英語が話せないといわれますよね。その原因の一つは、コミュニケーション活動よりも英語の構造を体系的に学ぶことに重きを置いているから。

日本語学習の場合も同じで、日本語の構造を重視する「文型シラバス」では知識の積み上げが中心で、コミュニケーション活動が二の次になってしまうのです。

でも、4技能全てを勉強できるのだから「みん日」はどんな学習者にも向いているのよ…ね??

 

どんな人が文型シラバスの「みん日」に向いているかというと、それは、将来日本の大学や大学院で勉強する、アカデミックな上級日本語能力を必要とするエリートな日本語学習者

「将来日本へ留学する」「日本の会社に就職し、正確な日本語を必要とする」というような学習者に効果的な教科書なのです。

 

私はこのブログで「みん日」の教材をシェアしていますが、私が教えている学校にはエリートな学習者は10%もいません。

それでもずっと「みん日」を使ってきているのは、上に述べたとおり、「副教材」が揃っていること、そして、日本語能力試験(JLPT)の対策がしやすいから。(趣味で日本語を学んでいる学生でも、ここ数年、JLPTを受験する学生が増えている。)

 

小中高等学校、大学、一般の日本語学校など、機関に所属して日本語を教える場合、いずれも使用する教材(教科書)が既に指定されていることが多いです。

コースの目標、時間数、教材、評価方法などはもう決まっていて、一個人の教師がシラバスを変えたり、学校のコースのデザインを変更したりというようなことは難しい…

 

私が教えている学校に来る学生の大半の学習目的は、「来月から1か月日本を観光する」とか「日本語で日本のアニメを見たい」、「日本文化に興味がある」というようなもの。

担当するクラスによってはエリートな日本語学習者は全くおらず、文型シラバスの「みん日」をどう使えばよいのだろう?と悩むことも多いです。

教科書は変えられないけど、「教え方の手引き」どおりではなく、もっと良い教え方があるのではないかと参考書を読んだり、同僚とディスカッションをしたり…日本語を教えて約20年になりますが、今も悩んで、内省して、わかって、やってみて「日本語教育って難しいけど、やっぱりおもしろい。私、この仕事好きだわ」って思うのです。

 

より良い授業をするために、何故その教材を使っているのか、そして、その教材がどんな教材なのかをよく理解しておくことが大切だと思います。

「みんなの日本語」はとても良い教科書です。
でも、日本語の授業は必ずしも教科書に合わせてするのではないということです。


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