「みんなの日本語」(第1課)を使った外国人への日本語の教え方を紹介します。
日本語教師がクラスの前に準備する授業の流れのプランを教案といいますが、ここでは教案だけでなく、新しい単語や文法の導入に必要なイラストや教材などもシェアしていきます。
初回クラスは内容が盛りだくさん。
夏に行うクラスなら、90分で汗がダラダラに。教師職というのは、意外と重労働です。
昔、夏休みに近い時期に暑さで授業中に倒れた経験があります。何故か片方の壁が全てガラス張りの、学生たちには金魚鉢と呼ばれていた教室で、クーラーもなく、妊娠していた私は人生初の立ちくらみ。ふらふらと傍にあった椅子に倒れ込んでしまいました。学生たちもパニックになり、大学所属の医者が駆けつけ、ひと騒動。大事には至らなかったのですが、今も忘れられない思い出です。
終助詞「か」 ー 質問文「~ですか?」
日本語は、文末の動詞に終助詞「か」を付けると、質問文になります。
第1課の前半で使用したイラストを利用し、名前・国籍・職業に関するQA練習をしましょう。(練習B4)
ミラーさんは会社員ですか。
ミラーさんは韓国人ですか。
いいえ、韓国人じゃありません。(私は)アメリカ人です。
ミラーさんは金髪だからアジアの人と間違えるってことはなかなかないような。でも、「韓国」という語彙の練習も兼ねて、ね。
ポイント 語彙「あなた」
日本語では「あなた」という言葉をあまり使いません。
日本語は、聞き手の名前や身分を知っている場合はその人の名前や身分、肩書きで呼ぶからです。
「あなた」を使うとよそよそしい印象になりますよね。私は授業で説明するとき、町の中で知らない人に声をかけるときなどに「あなた」を使うよ、と説明しています。
失礼ですが、お名前は?
会話表現「失礼ですが、お名前は?」の導入です。教科書では「練習C2」の短い会話練習です。
失礼ですが、お名前は?
「練習C2」の指導ポイント
- 「失礼ですが」は、質問や依頼をするときによく使われる前置きである。
- 「お名前は?」の名前の前に付く「お」は相手を敬う「お」である。
- 「お名前は?」の述部「何ですか」が省略されている。
- 「お名前は?」は述部が省略された疑問文であるため、イントネーションが上がる↑ことに注意する。
疑問詞「だれ」「どなた」
疑問詞「だれ」(丁寧な形「どなた」)を導入します。
まず、既出の文型で場面の確認です。
パーティーで知らない人がたくさんいますが、離れた場所にいる人が誰なのかをたずねます。
あの人はミラーさんですか。
では、
あの人は誰ですか。
指示語は第2課で扱うので、ここでは「あの人」という語彙として確認するだけにします。
応用:あの人は「どなた」ですか。
あの方はどなたですか。
上のイラストを使用するなら、「日本の首相の名前を知っていますか?」と、日本事情を紹介してもいいですね。さあ、皆さん、中学校の教科書を使って日本の政治制度の復習です。学生からどんな質問がくるか分かりませんからね。
クラス活動「だれですか?」
ここで、クラスメートの名前を聞くというクラス活動をしてみましょう。
少し離れたところにいるクラスメートの名前を、近くにいるクラスメートにたずねます。
「すみません。あの人はだれですか。」
活動を始める前に「時間制限は7分」「1人最低5回は質問する」といった指示を出しておきます。
コースが始まったばかりでクラスメートの名前を覚えていない学生がほとんどです。学生たちはこれをきっかけにクラスに打ち解けることができるかもしれません。この活動はまさに一石二鳥です。
所属を表す助詞「の」
所属を表す助詞「の」の導入です。(練習A4)
カリナさんは富士大学の学生です。
ワンさんは神戸病院の医者です。
締めに、以下の例文を。
わたしは〇〇日本語学校の教師です。
吹き出しのところに所属の日本語学校名や大学名を入れて使ってください。
(男性の先生は使えないね。)
そして、学習者にはこれ。
わたしは〇〇日本語学校の学生です。
「社員」と「会社員」の違いって何?
- 「社員」 特定の企業などに所属していることを述べるとき。
- 「会社員」 職業として一般的に述べるとき。
前回(第1課前半)で使った「~です」の導入イラストも再利用してたくさん練習しましょう。
並列、付加を表す副助詞「も」
並列、付加を表す副助詞「も」の導入です。(練習A5)
ミラーさんはアメリカ人です。(しつこい?)
リンカンもアメリカ人です。
ちなみに、今の学校教育では「リンカーン」のカタカナ表記が変わり、「リンカン」になったそう。「リンカン」のほうが英語の発音に近いからということですが、時の流れによる言葉の変化は面白い。
海外にいるとこれらの日本語の変化についていくのが大変です。授業の準備で語彙の使用例や使用頻度などを調べるときは、いつもGoogle先生から情報を得てます。有難や~
こちら↓も「も」の導入イラストです。
助数詞「-歳」
第1課の最後(練習A6)は、助数詞(-歳)の導入です。
助数詞は第11課で取りあげられる項目ですが、よく使うものは第11課以前の課でも少しずつ導入されます。
わたしは28歳です。
「みんなの日本語」の課が進むごとに、ミラーさんのプライベート情報が増えていきますな。
私が教師なりたてのときは私より年上だったミラーさん…今じゃ年下の男の子。いいなあ、ミラーさんは。永遠の28歳。
数字(11~99)の導入
コースの初めのクラスで数字の1~10は導入済みです。
ここでは年齢の言い方を導入するので、年配の学習者のためにも99までの数字を導入しておきましょす。
数字の練習には、フラッシュカード(無料ダウンロード)を使うと良いっすよ。

助数詞「-歳」のまとめ
※「ー歳」の場合に発音が変わる数字は、表の中で色を変えています。
注意 特に、4(よんさい)と9(きゅうさい)に注意です。
「9歳」は「きゅうさい」で「くさい」ではありません。鼻をつまんで「くさい」じゃないよとつまらないBBAの冗談を何十回と言っています…(でもみんな笑ってくれるよ。)
疑問詞「何(なん)」
疑問詞は第1課の前半で「だれ」が導入済みです。ここでは年齢を聞くための「何歳」の「何(なん)」を導入します。
世界共通で、女性には「おいくつですか」と聞いたほうがいいということも忘れず確認を。
山田さんは何歳ですか。
安倍さんはおいくつですか。
また、安倍さん。
「おいくつ」を使うと、丁寧に年齢を尋ねることができます。
余談ですが、日本人(アジア人)は欧米人と比べると幼く見えます。
私は教師なりたてのとき、学生たちに舐められぬよう、わざと老けて見える服を選んで授業に出ていました。大学講師なのに16歳の女子高生が授業をやってると言われたこともあります。今はすっかり年相応のアラフォーで、誰もそんなことは言ってくれませんが。 :(
第2課の教案と導入イラストはこちらからどうぞ。

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