【日本語の教え方】第1課:教案&イラスト(初心者向け!)「~です/じゃありません」

日本語を学びたいと意欲あふれる外国人に日本語を教えよう…え、でもどうやって教えるの?

日本語を教える上で大切なこと、それは新しい単語や文法の導入にイラストをバンバン使ってインパクトを与え、指導ポイントはきちんと押さえつつ、クラス活動も取り入れながら授業を盛り上げることです。学生が欠伸をしてしまうような授業なんてご法度ですぞよ。

名詞文:「~は (名前・国籍など)です」

主題を表す助詞「は」と名詞に付く助動詞「です」を導入します。(練習A1)

ここでは「名前、国籍、職業(会社員・大学生・学生など)」を述べる例文を以下のイラストを使って確認していきましょう。

わたしはスミスです(名前)

わたしは~です。(名前)日本語初級・第1課の教案とイラスト

わたしはアメリカ人です(国籍)

わたしはアメリカ人です(国籍) 日本語初級・第1課の教案とイラスト

わたしは会社員です(職業)

 

わたしは~です。(名前)日本語初級・第1課の教案とイラスト

 

 名詞文「~は~です」

  • 副助詞「は」は、主題(トピック)を表す。
  • 助詞「は」は「わ」と発音する。
  • 「です」は丁寧な表現である。

文型練習(パターンプラクティス)をする

新しい文型が導入できたら、次はその文型が実際に使いこなせるよう練習していきます。

まずは「パターンプラクティス」です。

「パターンプラクティス」とは、文の型(パターン)=文型に慣れ、スムーズに言えるようになるための口頭練習です。短文の一部の語彙を他の語彙に置き換えたり、肯定文を否定文や疑問文に変えたりして、とにかく繰り返し繰り返し行う練習方法です。

「みんなの日本語」では「練習B」の練習がパターンプラクティスに当たります。

ここでは、パターンプラクティスの中の一つ、語彙を置き換える「代入練習」からやってみましょう。

代入練習の欠点は、単純なので長くやるとつまらなくなってしまうこと。教師はイラストやスライドを使ってテンポよくすることが大切です。

以下のイラストを代入練習に使ってください。

代入練習 パターンプラクティス

わたしは~です。(名前)日本語初級・第1課の教案とイラスト

わたしは~です。(名前)日本語初級・第1課の教案とイラスト

 

新出語彙の練習も兼ね、名前、国籍、職業の代入練習をしていきます。

上のイラスト(右クリックでダウンロード)を印刷するかパワーポイントに貼り付けて全体で練習をしてください。次に教科書の練習Bを行い、新しい文型を文字で見て正しく確認していきます。(ただし、イラストがある練習問題は文字の部分を隠し、イラストのみで練習したほうが良いです。)

 

以下はさまざまな国籍のイラストです。アメリカ、中国、韓国、ブラジル、インドネシアに加え、近年日本語学習者が急増している国、ベトナム、ネパール、台湾を追加してみました。どうでしょう?アジア寄りですね。

国籍 職業 自己紹介

 

国籍 職業 自己紹介

 

 

~から来ました

次に、自己紹介でよく使う表現「~から来ました」を導入します。(練習C1)

この時点では助詞「から」の細かい文法説明はせず、「~から来ました」という会話表現として導入しておきましょう。

 

わたしはアメリカから来ました

~から来ました

会話練習をする

教科書「みんなの日本語」の場合、練習Bの代入練習などで新しい文型に慣れたら、今度は短い会話の練習です。(練習C)

「みんなの日本語」には各課の最後に応用の会話練習(ビデオ)がありますが、練習Cはその応用会話をスムーズに行うための準備の練習になります。

練習Cは付属のイラストシートがあります。教科書を「読んで練習」ではなく、このイラストを使って各場面の状況を理解しながら話す練習をしましょう。

イラストを使った練習の利点は、場面を見て考えながら話すという現実に近い会話の練習ができることです。(この練習でつまずいてしまう学生は文型が理解できていないのかもしれません。そんな場合は、練習Bにもう1度戻って文型練習をしてみても良いかと。)

イラストシートを使った練習が終わったら、似た場面(学習者の実際の生活に近い場面)を設定し、ペアまたはグループで会話練習をします。時間に余裕があれば、5分~10分ぐらいのグループ練習のあと発表してもらってもいいですね。

 

「教え方の手引き」を買って「練習C・イラストシート」を手に入れよう

「みんなの日本語」の場合、短い会話の練習のために、便利なイラストシートが市販されています。練習Cのイラストは「みんなの日本語・教え方の手引き」(スリーエーネットワーク) に付属しているCD-ROMに含まれています。

このイラストシート、第1版のときは「教え方の手引き」には含まれておらず、別途購入する必要がありました。しかもCD‐ROMではなく普通の紙媒体の本...
昔はこの本のイラストを1枚1枚スキャンしてコンピュータに取り込み、そのあとさらにその画像をパワーポイントに貼り付ける…という手間をかけていました。今じゃ考えられません。(その前はOHP!20代の人、知ってる?)

第2版が出版されたおかげで本当に授業が楽になりました。準備の時間が半減!
「教え方の手引き」はCD‐ROM付きでほんとにお買い得、買う価値ありです。

イラストをPPTに貼り付けるときは、横幅いっぱいに拡大し、教室の後ろの席からも見やすいようにしましょう。

 

~じゃ(では)ありません(名詞文の否定)

「~です」(名詞文)に慣れたら、次は否定形「~じゃありません」の導入です。(練習A2)

 

 わたしはシルバさんじゃありません。 [わたしは]スミスです。

はい、ブラジル人、シルバさんの登場。

 

文型(~じゃありません)の導入後はいつもの代入練習です。練習A1で使ったイラストを再利用し、名前・国籍・職業を否定形で言う練習をしつこくしていきます。

否定文

 

 名詞文の指導ポイント

  • 既出(既に話題になっている)の主題の「は」は省略できる。
  • 「~じゃありません」はフォーマルな場面や書きことばの場合「~ではありません」になる。
  • 「みんなの日本語」の練習Aには「~じゃ」の下にかっこ()で「では」と書かれています。学生の負担を減らすために、ここでは「~では」の使い方の紹介だけをして、練習は「じゃ」で統一しましょ。

「です」&「じゃありません」のまとめ

 

 

会話ビデオを見る ~応用会話の練習~

会話ビデオは学生たちのちょっとしたリラックスタイム。

ミラーさん、サントスさん、山田さんといった「みんなの日本語」の登場人物が順に出てきます。第2版では会話によるスト―リーの繋がりも強くなり第1版より面白くなりました。

会話ビデオの使用について

初めてビデオを見るとき、どうしても教科書(会話のスクリプト)を見ながらビデオを見てしまう学生がいます。教科書は見ないように指示しても教科書を見てしまい、せっかくの聴く練習のチャンスを逃してしまっています。

こんなときの対処法は、ビデオのスタートボタンを押す前に「テキストを閉じて」と指示すること。そんなことまでいちいちねえと思うかもしれませんが、海外で日本語を学ぶ学生にとっては、たとえ1分でも授業の中で聞く日本語は貴重なのです。

会話の練習をしていると、どうしても「小さい声でぼそぼそと話す」「教科書を見ながら話す」という学生が必ずいます。それは恐らく自信がない、間違えるのが恥ずかしいというのが理由です。間違ってもいい、恥ずかしさを捨てて学生みんなが声を出せる練習をしたいですね。

 

最初が肝心!日本語教師の任務とは?

日本語教師の仕事内容はいろいろ挙げられますが、その中でも大切な仕事の1つに「学習者が積極的に参加できる学習環境を作ること」が挙げられます。

初回の授業は学生はみんなやる気満々で臨んできます。でも、そのやる気を半年後も一年後も維持できるのかどうか...並大抵なことではありません。

 

そこで、教師の腕の見せどころ。

分からないとき、すぐに質問ができるクラスなのか、答えを間違っても恥ずかしくないクラスなのか、積極的に活動に参加できるクラスなのか、等々…

人の印象は最初の10分で80%が決まると言われます。
日本語の学習に対する印象、そしてクラスの雰囲気の印象も最初の1か月、いや最初の1週間、いやいやもしかしたら第1回の授業でほぼ決まってしまう…そんな可能性もあります。欧米で日本語を勉強していると言ったら「何でそんな訳の分からないことばを…」「頭がおかしいんじゃない?」「世界で一番難しい言語よね」というのがよくある話。でも私たち日本語教師はこういったネガティブな印象を覆さなければならないのです。

 

文法の説明ももちろん大切ですが、クラスの環境作りも教師の大切な任務です。
今後のクラス運営を左右する1回目の授業が勝負!日本語教師の皆さん、第1回のクラスは気合いを入れていきましょう。

 

「みんなの日本語」授業の流れ

以上、第1課の前半部分の教案とイラストを紹介しました。

内容は簡単、でも導入手順を間違うと学生が混乱、パニックになる可能性もあります。
最後に「みんなの日本語」の一般的な授業の流れをまとめます。

※「みんなの日本語」の各課にかかる時間は平均して4時間~5時間です。

各課の授業の流れ

  • STEP1
    導入
    このブログのオリジナルイラスト、または「みん日」シリーズの「導入・練習イラスト集」のイラストを使って新しい文型を導入する。
  • STEP2
    練習A
    練習A:教科書の例文を読んで文字で文型を確認する。
  • STEP3
    練習B
    練習B:文型練習(パターンプラクティス)をする(時間に余裕があれば、テキスト以外の練習問題またはクラス活動をする)。
  • STEP4
    練習C
    練習C:新出の文型が入った短い会話を練習する。※各文型ごとに練習ABC.をくり返す。
  • STEP5
    会話
    各課のテーマになっている会話(会話ビデオ)で新しい会話表現を確認し、練習をする。
  • STEP6
    問題
    聴解、読解を含む「問題」(各課の最後のページ)で理解度を確認する。

 

上記の授業の流れは、「みんなの日本語」の全ての課で共通です。

初めのうちはこの進め方がややこしく感じるかもしれません。でも、場数を踏めば教案なしでもできるようになります。

コメント

  1. kumi anraku より:

    大変参考になります。ありがとうございます!

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