世界の日本語教師の皆さま、お久しぶりです。
2021年、初のブログですが、またふざけた記事になりそうです。でも、喜んでくださる方もいると信じて、恥を知らずに発信します。
実は先日、とある日本語教授法の本に「みんなの日本語」の第4課の目標となるコミュニケーション活動として「過去の行動について説明する(『事情聴取』)」と書かれているのを見つけました。
「えっ?事情聴取??」目がテンテンテン。
事情聴取って疑いがかかってる人が警察からいろいろ質問されちゃうやつだよね…?
この教材を作るに至った流れ
「事情聴取が目標」と書かれているのを最初に読んだときは、文型シラバスだから変な場面のコミュニケーションになるんだよ!という皮肉が書かれているものと理解し、ひどいなーと思ったのですが、この「過去の行動(~ました、~ませんでした)」って実際どんな会話で使われるんだろうと考えこんでしまいました。ひどいと思ったけど、事情聴取って「~ました」の連続、だから間違いではない。
第4課は動詞の否定、過去の活用が新出の課で、話す練習のときはとにかく正確な文にすることに必死な学生たち。タスク中心の教科書を見ると、休みのスケジュールを話すとか1日の生活を話すとか、一般的なタスクがありました(※超初級のレベルの話です)。これでもいいんだけど、「事情聴取」みたいな予想もしない場面設定もいいんじゃない?とふと思い、教材作成してみることにしました。
テーマはみんなが大好きな探偵系。コナンを知らない日本語学習者はいないし、絶対喜んでくれるはず。会話のロールは尋問をする刑事と容疑者で、それぞれ何をしなきゃいけないか(目標)は説明しなくてもいいぐらい明確。さらに、目標達成のためには、刑事の役は犯人を見つけるために厳しく尋問、容疑者の役は疑われないようにしっかりと答える…なんていうのはウソです。そんなスキルまでは初級レベルで求めません。
休みのスケジュールとか1日の生活を話すというタスクでは、たずねて答えてたずねて…答えに対する感想も言わなきゃいけないけど、このレベルだと「そうですか」「いいですね」「大変ですね」ぐらいしか言えず、学習者によっては消化不良?で終わる可能性もある。でも事情聴取だったら、たずねるほうも答えるほうも「~ました、~ませんでした」を使った文だけで現実と同じ会話になる!感想はいらない。これっていいんじゃない?
でもやっぱり「事情聴取でたずねる、答える」っていうのは一生経験しないであろうタスクで、印象はよくないので、「~ました、~ませんでした」が使えるようになることを目標にした、半分はお遊びの教室活動としてここではご紹介します。以下にある音声も正直ふざけてます。その点、ご理解いただける方はぜひ授業でやってみてください。
「事情聴取」の状況イラストと音声
いつものように以下のイラストをパワーポイントに貼り付け、ご利用ください。
この活動で初級レベルに合わない語彙は「犯人」の1つ。でも、コナンのおかげで知ってる学生も多いかも。イラストもコナンを使うとか、サスペンス劇場の取り調べ中の動画を見せるとかしたいけど、著作権があるからね。何とかあるものでがんばろ。
活動の流れ
イラスト1:導入「犯人は誰ですか」
イラスト2:下のイラストを見せて、以下の音声をインプットとして聞いてください。そのあと、質問に答えてください。
↑音量、気をつけてね。
質問
- Bさんは先週の木曜日、何時に起きましたか。
- 何時まで働きましたか。
- 誰と日本語を勉強しましたか。
- Bさんは犯人ですか。
- 犯人はどこですか。
B:8時に起きました。
A:そうですか。それから、どこへ行きましたか。
B:会社へ行きました。9時から5時まで働きました。それから、うちで日本語を勉強しました。
A:一人で勉強しましたか。
B:いいえ、鈴木さんと勉強しました。それから10時に寝ました。
A:わかりました。あなたは犯人じゃありませんね。
B:違いますよ。犯人はこの教室にいます。
A:何ですって。
B:そうです。犯人はこの教室です。
犯人を捜せ!
教師:Bさんによると、犯人は教室にいます。犯人はどこですか。
学生:(爆笑)の予定
犯行が行われた「先週の木曜日」、何時に、どこで、なにを、だれとしたか、刑事役と容疑者役に分かれてロールプレイします。
ロールプレイの後は、全体で次のイラストを見ます。
教師「みなさん、犯人は午後11時に来ました。これがビデオです。」「犯人はだれですか?!」
刑事役の学生に容疑者の学生は11時に何をしていたか質問していきましょう。アリバイがないような場合は「あなたが犯人ですか?」「違います、笑」のような感じで楽しく終わらせます。
この教材について
音声の人の声はコンピューターで作成したものです。言われなくてもわかるか。
教室で使うインプットとしては良くないかもしれませんですが、おもしろくてついつい…
でも、周りに協力してくれる日本語ネイティブの人がいない場合には教材作成にこういったツールの利用もアリかなあと思っています。きっと機能はこれからもっともっとよくなるはずだし、それに、会話は人間とじゃなくAIロボットと、っていう日が来るかもしれないしね。
音声作成:Open JTalk
HTS Voice “Mei (Normal)”
Copyright (c) 2009-2012 Nagoya Institute of Technology
コメント
海外在住アラフォー”新米”日本語教師のチョコです。私はみん日ではなく、まるごとを使っていますが、佐藤先生のブログにはいろいろな場面で本当にお世話になっております。今日、過去形の練習方法を考えていた時に、たまたまこちらの教案にたどりついたのですが、なんだかとっても感激しました! 事情聴取とは、めちゃくちゃ面白い設定ですね!!! 生徒さんのレベルに関わらず、いくらでも工夫ってできるんだな、と思いましたし、佐藤先生のような先生に私もなりたいと思いました! 教案作りに追われる毎日ですが、とても励まされました^^ どうもありがとうございます。
チョコさま
わたしもまるごと使ってますよ~
みん日も使ってます~おかげで常に頭を活性化してもらえています。
事情聴取、気に入っていただけました?こういうちょっと変わった教材が集められた教科書とかが市販で出るといいですよね。
教案作り、大変ですが、楽しんで?がんばってください☆