第24課(教案)「あげます/もらいます/くれます」どう教える?

ウチとソト 第24課(やりもらい・授受表現)の教案&イラスト

授受表現(やりもらい)の「~くれます」が導入される「みんなの日本語」第24課の教え方、教案、導入イラストです。

この課ではいつもの理論的な文法の説明だけでなく、日本の文化や習慣、価値観を紹介し、それが言語(日本語)にも反映されていること、文化を無視して言葉(日本語)は話せないことなどを説明しなければなりません。

でも、こういうところが外国語を勉強することの面白いところよね。

ウチとソト

「あげます・もらいます」の復習

第24課で新出の「くれます」を導入する前に第7課の「あげます・もらいます」を復習しておきましょ

第24課(やりもらい・授受表現)の教案&イラスト

 

第7課の詳しい教案はこちらです。

 

次に、復習ができたら以下のまとめを使って非文(文法的におかしな文)を確認します。

「あげます・もらいます」の例文で、「わたし」と「ウチの人」が使えないことを確認します。

第24課(やりもらい・授受表現)の教案&イラスト

 

第24課(やりもらい・授受表現)の教案&イラスト

 

上記の非文による説明で「ウチの人」って何?ということになります。
そこで少しテキストを離れ、以下のイラストで日本特有の概念「ウチとソト」を説明します。

 

「ウチとソト」の説明

第24課(やりもらい・授受表現)の教案&イラスト

 

日本語初級の文法説明ではこの「ウチの人」「わたしのグループ」と呼んでいることもあります。

また、職場での「ウチの人(わたしのグループ)」には言及せず、家族である「ウチの人」のみを紹介している場合もあります。(「みんなの日本語」第24課の練習も「家族」のみ)

でもここで「ウチとソト」の概念を理解してもらうには、家族だけでなく、職場でのウチの人(同僚)や学校でのウチの人(友人)なども例に挙げて具体的に説明したほうが分かりやすいと思います。

 

例えば以下の職場の例はどうでしょうか。

職場の場合の「ウチとソト」

1) 会社の中で「わたし」と「先輩である同僚」が会話をする場面

わたし:山田さん、おはようございます。
山田(先輩):ああ、田中さん、おはよう。

2) 「わたし」と「他の会社の人」が会話をする場面

わたし:今、山田を呼んできます。

このように場面によって「ウチとソト」の関係が変わってくることを説明します。日本人は対人に関して常に「ウチとソト」の関係を意識し、言動に表します。

 

したがって、以下の例のように「あげます・もらいます」で「わたし(話し手)」が使えなかった例は「ウチの人」にも当てはまることが分かります。

第24課(やりもらい・授受表現)の教案&イラスト

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~をくれます(練習A1)

わたしはタワポンさんにりんごをもらいます。

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では、タワポンさんは...

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同じ文脈で主語が変わった場合、どうなるのか。導入時の大切な学生の推測タイム!です。
5秒ぐらい待ちましょう。そして、

 

 タワポンさんはわたしにりんごをくれます。 

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「くれます」が導入できたら、「くれます」の受け手わたし(話し手)」だけでなく「わたし(話し手)」の「ウチの人」にもなることを確認します。

 

第24課(やりもらい・授受表現)の教案&イラスト

 

「くれます」のポイント

  • 物を受け取る相手を格助詞「に」で表します。
  • 「くれます」を使った文で、物を受け取る人に「わたし(話し手)」「ウチの人」以外は使えません。×サントスさんはあの人に花をくれます。)
  • 「くれます」の受け手はいつも「わたし」または「ウチの人」なので、「わたし(話し手)に」を省略することが多いです。

 

以下の非文の例で、「ソトの人」(話し手と関係のない第三者)は受け手にならないことを確認してもいいですね。

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~がくれます(練習A2)

練習A1の「~くれます」の例文では、物の与え手が主題(「人」は、~)でした。

例:サントスさんは、コーヒーをくれました。

しかし、練習A2の例文では、与えられた物が主題(「物」は、~)となっています。そのため、物の与え手は主語として「」をとっています。

例:このコーヒーはサントスさんくれました。

 

練習B2の聞き手の返答は、主題(「物」は、~)が省略されている例です。

(例)A:ブラジルのコーヒーですね。
B:ええ。(このコーヒーサントスさんくれました。

 

あげもらい(授受表現)のまとめ

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「ウチとソト」についての本

日本語教師なら必ず知っておかなければならない概念です。

「ウチとソト」について書かれた本はたくさんありますが、おすすめの1冊は先月(2018/6/20)出版された「日本語を翻訳するということ – 失われるもの、残るもの」 (中公新書)です。こちらの記事に詳しく書いたので読んでみてください。

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